上海繋がりのオマケと言ってはなんですが、上海がのちの人生に大きく影響を与えたと言う人物
を描いた小説の話を付け加えておきます。

その人の名は茂登山長市郎さんといい、銀座のサン・モトヤマの創業者と言えば大方はご存じだと
思います。一時読み漁っていた幸田真音さんの作品の中で、いつもとかなり毛色が違った作風の
『舶来屋』で、彼の波乱万丈な人生の回顧をしています。

『舶来品』なんて言っても、今の若い世代にはひょっとして通じないかも知れませんが、少なくとも
『輸入品』よりかは遥かに格式があり、そして重みのある響きだとは思いませんか?
その舶来品の中でも当時では飛び切り上等な洋服との出会いが、茂登山さんの人生を大きく変えて
行くことになります。その出会いとは、彼が出征して上海に一時駐屯することになったある休暇日に
街の洋品店でショーウィンドウ越しに、目に穴が開くほど食い入る様に眺めていたバーバリーコート。

いつか自分も生きて戦争から戻れたら、こんな洋服と関わって行きたいという決意を胸に抱きながら
激戦地へと向って行くと言うところからこのドラマは本筋へと展開して行きます。瀕死の重傷を負いな
がらも辛うじて帰還できた茂登山さんは、戦後の混乱期を持ち前のアイデアとセンスで生き抜き、
サン・モトヤマの基礎を築いて行きます。
『美しいもの、そして本物をこの国へ・・・・・・。』をモットーに精力的に活動した結果がかのエルメスや
グッチを初めて日本へ登場させた、正真正銘の立役者であるわけですね。


家内が口癖のように言ってる、『5月生まれはヴィーナスの星がついてるから、つい、良いものに目が
行っちゃうのよね』とまあ、あながち『買い物するぞ』と予告してるとしか思えないフレーズですが、
その同じ5月生まれである私もそう言えば、かなり若い頃からそうだったかも知れず、随分とえぐれて
見える親のスネはそのせいかも知れません。

もう一つ家内の受売りですが、あの三輪明宏さんも曰く、『人間、美しいものに接していれば心も穏や
かに、そして豊かになる』んだそうです。なかなか一朝一夕には行きませんが、心掛けとしては留め
て置きたいものです。
特に『見る目』や『味わう舌』、『聞き分ける耳』、『嗅ぎ分ける鼻』そしてもう一つ、『触り分ける手』の
五感を磨き上げることが出来たら、それは楽しい人生となるに違いありません。

一昔前のコーヒーのCMではありませんが、『違いが判る男のなんとかシャバダ~』みたいになると
物凄くカッチョいいんでしょうね。 

さて今日はホワイトデーですね。
今宵本命同士、『違いが判る』そんな素敵なひと時をお楽しみください。