もうかれこれ260をも超える記事を書いてきましたが、一番書き易いのはやはり旅の
話題です。大学を卒業してからこのかた、足を踏み入れたのは22の国と地域で、特筆
するほどの数ではありません。特に仕事と趣味の関係で、香港やアメリカなど相当数の
リピートがあってむしろかなり偏っています。

ですから、まだ南米とアフリカ、そして勿論南極大陸へは出向くことがなく、これから後
身体が言う事を聞く間に、五大陸は制覇したいとの願望は持ち続けています。

以前、珍しい訪問国の一つとして『シリア』をご紹介しましたが、もう一カ国、あまり観光で
訪れることの無い珍しい国の話です。その国の名は、

   Negara Brunei Darussalam ブルネイ・ダルサラーム国

カリマンタン(ボルネオ)島北部にある小王国です。香港から約二時間、ロイヤル・ブルネイ
航空で首都バンダルスリブガワンに到着します。赤道近くに位置し、石油と天然ガスで
潤う大変裕福な国。ハサナル・ボルキア国王の下、50万人弱の人々が平和に暮らす
三重県位の大きさしかない小国です。

しかし、持っているものは持っています。今でもそのはずですが、教育費や医療費は全部
国が負担し、所得税が無いため公表されている国民所得は実質的にはもっと高いと言える
でしょう。道行く人、出会って話す人が
皆おおらかだったのはそのせいでしょう。

残念ながら滞在は二日間だけだったので、観光らしいことは何一つしてませんが、運が
良ければ凄い人に合えるかもと、連れられて行ったのが王宮の正面ゲート前。

まさか、ここから国王が、『おお、よう来たな』、なんて言いながら出てくるわけないでしょう。
そうつぶやきながら炎天下の中待つこと少々、急に立派な紋章が付いたこれまた立派な
金と黒のゲートが開いたかと思うと、そこから真っ赤な2ドアのロールスロイスが出てくる
ではありませんか。鼻先にはあのトレードマーク、しかし、金ピカに光り輝いて、ただの
ロールスでないことは一目瞭然です。

よく目を凝らせばドライバーはボルキア国王自身で、一台の白バイが先導するだけで
後続の御付やガードは無しです。呆気に取られて見ていたところからハッと我に返り
慌てて手を振ると、なんと、スローダウンして振り返してくれたのです。お顔もハッキリと
拝ませていただき、ほんの数分間の出来事でしたが、記念に残る1シーンを記憶に刻む
ことが出来たのです。

写メと言う秘密兵器は当然無い時代、自分の頭に記憶させることしか手立てが無かった
歯がゆさは、このボルネオだけに限らず、多くの場所で同じような思いをしてきました。
その大切な記憶がおぼろげになる前に、こうして文書だけでも残しておくことの大切さと
楽しさをこのブログというもので知ることが出来たようです。

行く度に書く、書くために行く、まあ、どちらが先でも旅の数だけ記事が増えていくのは
喜ばしいことです。