ワインフェスを後にし私たちが夕食に向かった先は、同じ中環地区にある蘭桂坊(ランカイフォン)
です。香港の官庁・金融を中心とする典型的ビジネス街であるここ中環(セントラル)地区で、飲食
店を探すのは一苦労なのですが、香港で最も多くの西洋人が集うこの蘭桂坊には、パブ、バーを
はじめ小じんまりとした飲食店が数多く軒を並べています。

週末ともなれば店から溢れ出た客達がビールやワイングラス片手に、夜更けまで何をそんなに
楽しそうに喋っているのか、これぞ正真正銘正宗の『不夜城』と化していきます。

アルコールは既に血流に乗って体中を駆け巡っていましたので、ここは腹ごしらえのみということ
で小中華料理店へ飛び込みます。せっかく香港くんだりまできているので本格中華と行きたい
ところですが、最低4名の面子が揃わないと満足いく料理は食べれないと信じて疑わない私たち
です。

しかし、この界隈の中華料理店はそれこそ一人で気兼ねなく入れる、飲んだ後の〆のラーメン屋
みたいな感覚で入れるカジュアルさがあるので、二人旅の私達には持って来いなのです。

それでも注文はしっかりと前菜・メイン・野菜、そして忘れちゃあいけない伊府麺のフルコース
です。インスタントラーメンのような気もするこの伊府麺、黄ニラとの相性抜群でシンプル・イズ・
ベストの代表格なお気に入りメニューの一つです。



さて、日付が替わってもう最終日の翌晩、香港の友人と久し振りの会食です。
場所は同じ中環地区にほど近い所で、何度もこの地を訪れている私が不覚にも一度も足を踏み
入れたことのなかったところ。



Stairs to Heaven ならぬ天国への世界一長~いエスカレーターがある香港の名所。
蘭桂坊が『動』ならばこちらは『静』のウェストサイドです。

もともとこのエスカレーターの終点がミッド・レベルといって、香港でも有数の高級住宅地となって
おり、住人の交通手段として造られたものなのですが、ご覧の通り行きは良い良いの片道運行。
そうこうする内国際色豊かなセレブ住人目当てでレストランやパブ、それにインテリアショップや
画廊などが出店して香港版SOHOが出来上がりました。天六商店街ほどではないにしろ中間駅
を経由しながらのちょっとした散歩?ができます。



日曜の夜だというのにSOHOは結構な人出で、友人と三人、さて何を食べようかと暫しぷらり
ぷらり。ソウホウしているうち友人が、「ギリシャ料理って食べたことないけどどんなん?」と来た
ので、「アテネェ?、百聞は一食に如かずじゃあないの?」とばかりお腹も空いていたので香港
でグリークです。



幸い?店内は静かで久し振りにゆったりと会食歓談でき、募る話に踏み入るも手持ち無沙汰と
なって来たので、そろそろおねむの家内をホテルへ送り届けがてら、友人ともう暫く飲み直しと
いうことで、地下鉄で尖沙咀へと戻ります。



下りは結構大変そうでしょ?


香港ではこのパターンで彼とよく尖沙咀や尖沙咀東を飲み歩いたものでした。今回はあいにくの
日曜日で、よく行ったお店は全部お休みです。でも、知らない間にヴィクトリア・ハーバーに面した
ビルの1階がライブバンドが入ったバーへと変身していて、ロックな空気の中2人とも大声を張り
上げながら先程の続きに興じました。

アッという間に日付も変わろうとしていたので店を出て、昔懐かしい場所を訪ねながら真夜中の
散歩と洒落込んだのです。道やビルなどはあまり変わり様がないのですが、お店がだいぶ入れ
代わってしまい、有名なナイトクラブも全て姿を消してこの香港から「妖艶な夜」が消え去っていた
のでした。

国吸われて夜会無し、夜城秋にして哀愁深し

「今度来る時は絶対平日にしろよ!」、と言い残して終電を捕まえるべく急ぎ足で地下へと消えて
行く友人を見送る私でした。