公然と会社をサボった朝はいつもより2時間も寝坊して起き、出発までの間をメールと
ブログのチェックに費やす。家内が羽田空港まで送ってくれるというので、ランチを兼ねる
ことにして早めに家を出るとする。

空港でキャプテンと合流して仲良く三人でランチの後、これから運転免許が必要ないという
解放感からか、ラウンジで生ビールをいただく。それも二杯。昼間のビールはかようにも身
に染みるのか。ゲスト入場のキャプテンはこれ見よがしにサントリー・ロイヤルのロックなんぞ
席へ持って帰ってくる。もう完全に『旅人モード』へと突入しとるな。気の緩んだキャプテンは
分り易い奴だ。

この時期、昼間の羽田は比較的空いており、手荷物検査場も殆ど列が無くスムーズなのが
分りつつ、キャプテンをJGCレーンへお連れして喜んで貰う事にした。訳の分らん感嘆台詞を
後ろでブツブツ呟いていたな。元センターの私の前へ元ウィングが来ると、スロー・フォワード
になってしまうことは(ラグビー通のみ理解可能)お互い今でも忘れていないようだ。

北海道行きローカル便の搭乗口は、いつも乗り慣れているど真ん中、最短距離の大阪便
とは違い、来た事の無かった端の方にあるのだが、飲食コーナーがあったりして意外と賑や
かなのには驚いた。予約状況通り本日の函館行きは満席。機材も777から737へとダウン
サイズしたことで、間もなくの冬の到来を告げている。

座席は15AC。Jクラスのすぐ後ろ、3人掛けが何故か二人掛けで、おまけに前とのピッチが
異様に長く、とっても贅沢な気分になれる。もし、同じ座席アレンジの737に登場されるなら、
是非早目にこの席を確保されたい。ちなみに実際の運航は子会社のJAL EXPRESS。
CAさん達は若くて滅茶苦茶愛想が良い。もちろんサービスも...、もちろん根びいきでね。


                            


定刻出発して気が付けば、窓の下はどう見ても東日本全域ぶ厚い雲に被われてるといった
感じ。週初めから北海道の天気は梅雨の様で、この日も実は雨を覚悟してやって来た。
ところがどうだろう。自他共に認める晴れ男の私が津軽海峡に差し掛かると、雲がどんどん
薄くなって行く。こちら頭が薄くなって行くキャプテンも、自分も晴れ男だからと言い張り、
手柄を二分したがる。ここはキャプテンの言うとおりにすべし。旅は始まったばかりだからな。

単純に函館空港が近づき、飛行機が高度を下げただけで、今度は雲の下に居るのだから
津軽海峡もばっちり見えるはず。全く二人ともジュンサイな奴。とてもちっちゃな函館空港へ
あっという間に着陸した。こんなに海の傍にあるとは今まで気が付かなかったなあ。

ワンダーエアポート函館はプロのma2ma2さんのブログにお任せするとして、函館市内行き
のバスが運よく停留しており飛び乗る。所要時間は目的地函館駅前までたったの20分。
途中湯の川温泉、競輪場を通って駅前へ400円也。市電が走る懐かしの町函館。駅前の
ロータリーと北のテルミニ駅舎が新しくなっていた。


今宵お世話になるのは真ん前にそびえ立つロワジール・函館。以前はハーバービューホテル
と言う名で親しまれていたようだ。バス停から歩いて1分、朝市や市電停留所、十字街、松風町、
大門仲通り、自由市場などへのアクセスは徒歩圏内。函館山だってロープウェイ駅まで歩け
ない事はない。

2泊目が鹿部温泉なのと、我々にはその前にやらなければならない、そして失敗が許され
ない重大なミッションが待っていたため、立地の良いホテルに宿泊することが必須であった
のだ。実際、このホテルでは最上階の広めの部屋を¥1,000アップで提供してもらい、
凄い豪華なブッフェ朝食が付いてツインがなんと一人¥7,300という安さ。おまけに見晴らし
最高で、別室となったバスルームには充分過ぎるアメニティーが揃っている。どおりで女性客
が多いはず。それと意外にも一人旅が目についた。ここなら安心・快適だわ。ビジネスホテル
評論家でもある出張の多いキャプテンも一押しの宿。

係りの案内で部屋へ入るやミッションの最終確認を済ませ、早速行動開始となった。
何としても短時間であの特攻服おばちゃんの店を見つ出し、今宵函館山の頂を制覇したのち
の祝杯の場にせんことを目指して...。

時間制限のある我々に残された作戦は一つだけ。以前おばちゃんが案内してくれた自由市場
を訪ねて聞き込みをすることだ。当のキャプテンはどうやら私任せらしい。現役時代はあなたが
私とのサインプレーの指示をしていたのにな。まあいい、任せなさいって。


徒歩10分程で自由市場に到着。閉店ガラガラ、ではなくてギリギリ滑り込みセーフ。
6年前の記憶がよみがえり、なんだかものすごく懐かしくなってきた。店じまいの準備をして
いる一角へ行き、ストレートに白い特攻服着たおばちゃんを知ってるかと聞く。最初は首を傾げ
るだけだったが、そこは函館のやさしい人達。真ん前や斜め前の店の人達にも声を掛けて聞い
てくれるではないか。

するとどうだろう。私の前にいたお姉さんが〇〇さんじゃあないかと、当たりをつけると、すぐに
斜め向かいの店の大将が、特攻服?ひょっとして白いシャツの襟をいつも立ててた人かい!?
と、あの独特の函館弁イントネーション。

     ビンゴ!そっ、そのおばちゃんです!!


ほらみろキャプテン、どや、一発的中やでぇ。これ以上無いスーパードヤ顔をキャプテンへ向け
ると、相変わらずの無表情。嬉しないんかいと、即突っ込みを入れたくなるような顔。

そう、あたかもまだここから先のストーリーが聞けてないから安心するのはまだ早いとでも言い
たげな顔だ。というよりもラグビーのゲームメイクは監督ではなく、選手任せなのだ。40年以上
前の中学生でもそうであったように。高校でもキャプテンだったキャプテンは、大局を冷静に
観察しているのだった!?

その通り、話には勿論続きがあって、それを大将から引き取ったのはおばちゃんを良く知ると
言うさっきのお姉さんだった。肝心なことを聞かないとミッション・コンプリートにはならない。
最後は吉と出るか凶と出るか、ここはひとえにキャプテンの運にかかっているんだよな。

そんな閉店間際、客足の遠退いた静かな市場の中で、何も買いそうにない客の我々に、
ついにその瞬間がやって来た。