市電の停留所は『五稜郭公園前』となっているので、てっきり降りて直ぐあるもんだと高を
括っていたのが大間違い。地図を持たずに出て来た二人、丸井今井百貨店の前で降ろされ、
さてどっちへ行くんだぁ? 函館では〇〇前とかその名の通りの停留所は曲者なので気を
付けられたし。『近』又は『り』と解釈されたい。


 

幸い電車の席の向かいに観光客らしき家族連れが居たので、チャッカリ後をつけることにした。
夕べ来ただろう同じ地域とは思えないほど、全くの別世界だった。滞在している駅前と違って
ビルは有るし人通りも多いし、第一活気がある。函館商業唯一の繁華街なのか。

テクテク歩いていると、快晴の函館の空に突き刺すようにそびえ立つ五稜郭タワーよりも先に、
この目に飛び込んで来たのがこれ。

      
 

一人感動?しながらデジカメを構える私を不思議そうに眺めるキャプテン。和食党の彼には
まったく興味のない事。チーズバーガーだっけかな? 次回は一人でも絶対食べてやる!

 

前回時間の都合で来れなかった五稜郭タワー。展望ルームへ上がるチケットを購入する際、
カウンターのお姉さんにどちらの都道府県から来たのかと聞かれ、神奈川県だと答えると、
ではこれをどうぞと何故かサラダッキーをひと箱くれた。アンケートのお礼だそうな。それも
先着順だって。ラッキー!?

ブラックライトが点いたエレベーターで昇り切った展望室からは、勿論の事、360度の函館大
パノラマが満喫できる。そしてJapanese Pentagon、これが錦秋のフル五稜郭であります。

 

ぐるっと一周を30分程かけて回った後、五稜郭内の散策へ向かう。銀杏の黄色は日本大通り
のものより鮮やかだ。やっぱり寒暖差が激しい分美しいのだろう。入口を入ると最初に現れる
平成22年築の箱館奉行所。


 

当時、函館山の麓(現旧函館公会堂)にあったものがここへ引っ越したそうだ。その理由はのち
ほど。拝観はせずにそのままぐるりと一周してみる。11月も半ば近いというのに暖かいなと話し
ていると、前から来た人達も同じ事を話してた。空気が澄んでいて清々しいが、減って来たお腹を
満たしてはくれないし。汽車の時間もあったので、その前に名物らーめんを食べなければいけ
ないのだ。

らーめんにあまり執着の無い私は、不味くなければどこでもよかったのだが、スープまで全部
飲んでしまうという、らーめん通のキャプテンが駅前の『ゆうみん』へ行こうと言った。『あじさい』
という有名店があるらしいが、わざわざ出向いていって並ぶ時間はなかった。

昼間のビールも手伝ってか、オーソドックスな味の塩らーめんは口に合ったが、決してスープを
飲み干したりはしないのだ。だってこれがデブる一番の原因だからと、キャプテンを諭すが、
『だって好きやもん』、と言われれば万事休す。

少々時間が余ったので、人気のない朝市を冷やかしながらの散歩をする。朝市という名を改名
する時が来ているのではないかと思うのは私だけか。ホテルへ戻って荷物をピックアップし、さあ、
いよいよ6年振りに恩師夫妻が待つ鹿部へと、小一時間程の北の車窓・鉄道の旅だ。

外とは違って意外に賑やかだった北のターミナル内、函館駅。綺麗に改修されたこじんまりとした
のどかな駅だ。乗るのは函館本線鹿部経由長万部行鈍行。一日4本位しかない本戦は名ばかり
のローカル線だ。出発30分以上前だというのに車両は既にホームにある。2両編成ハ40だ。

 

こいつのぺイントはやっぱりクリーム&オレンジ・レッドが一番似合うと、元チビ鉄は思うのだが。
出発20分前ではあったけど、キャプテンと二人ベストポジションを陣取るため車内へ進む。
しかし案ずることなかれ、他に乗客は居ないのだ。

とても懐かしいブルーベルベット調の四人掛け椅子と天井扇風機のスウィッチ。さすがに
扇風機は送風機に付け替えられてはいたが、充分昭和の匂いは漂ってくる。ワンマンの
ディーゼル機関車は初体験でもある。

発車五分位前になってようやくポツリポツリと乗客が増え始めた、といってもほんの5・6人
だけど。制服姿の男女学生さんだから通学に使ってるのかな。JR北海道のIC電子マネーはKitaca.Suicaが使えると思って持ってきたのだが、改札のお姉さんが使えないと言った。後で
調べたら2009年がら併用して使えるとあったのだが...、まあ、いい。旅の嘘は聞き捨て
だから。

ほどなくあの『ふぁ~ン』という懐かしいクレッシェンドな汽笛と共に、独特のディーゼルエンジン
音を響かせながら汽車はゆっくりと函館駅を出て行った。 


 

通勤電車の車窓から見える横浜の風景とは一変して、大沼公園への登り勾配から観る
これぞまさしく錦秋蝦夷絵巻。モミジが少ない分、ここいらの紅葉は鮮やかな葉だ。

それにしてもディーゼルが悲鳴をあげながら本当にゆっくりと坂を上って行くのが、どこか滑稽
な感じもする。そこへ大阪からの合流組から電話が入った。もうすぐ大沼公園なのだが、ウマい
具合に『森-大沼公園』間の高速開通に出くわし、初走行を待っているところだというのだ。
これも何かの巡り合わせ、きっと助手席の奥さん共々、いい記念になったに違いない。
大沼公園駅で拾ってやると言われたが、現地ホテルでということにしてこのまま汽車の旅を
続けることにした。

電話の後ふと外を見やると、田んぼの中に忽然と現れたコンクリートの塊と鉄筋工事。その形
から直ぐに北海道新幹線だと分ったが、ここまで進んでるとはちょっとビックリした。場所は
北斗市渡島大野駅付近で、何を隠そうここが『函館駅』となるそうだ。ちょっと待てよ、かの
新横浜駅も工事前はこんな所に作るのかというくらい、都会の田舎であったそうだが、ここは
本当に田舎で何んにもないぞよ!

そこでキャプテンが一言、『政治力とちゃうか』であった。大きく納得。そして開通時の変貌が
この目で観てみたくなった。生きてるよな、俺たち!?汽車の旅はさらに続く。