ウィーンを発つ前にもう二つお伝えする事がありました。ひとつはもうひとつの「あれ」、そしてもう
ひとつは「アラブ系の人々」の謎の続きです。

オーストリアとアラブ諸国との歴史的繋がりの土台上で成り立っているものと思われますが、どうやら
夏の間の避暑に主とその家族をはじめ宮殿スタッフとその家族という、一族郎党一個師団での大旅行
だそうです。スケールは途轍もなく大きいのですよね。



ウィーン観光の大トリを務めますのがハプスブルク家の絢爛豪華な別荘であるシェーンブルン宮殿。
あいにく宮殿内の撮影はNGなのでご紹介できません。がしかし、規模こそベルサイユには見劣りして
しまうものの、その凝縮版ともいえるシェーンブルンにもため息は尽きないのでしょう。



なんて無責任な事を言っておりますが、ヨーロッパの主たる宮殿の内覧をしてまいりまして気付いたことに、
その内装の均一性というのでしょうか、「あっ、これ、あそこみたいだ」という場面が沢山登場してきます。
ハプスブルク家の勢力がいかに絶大だったかを証明するものだという事ですね。

その中でも少し邪道かもしれませんが、各宮殿内に飾られているシャンデリアの取り付け位置が少々低い
という事がやけに気になっていました。紐解けば、当時の住人の皆さんは比較的小柄でいらしたようで、頭
をぶつけると言うような事はなかったのでしょう。かのナポレオンさんやルイ14~16世もかなり小柄だった
そうです。


と、ここまで書いていて突然、間違いに気付いてしまいました。

シェーンブルン宮殿とベルヴェデーレ宮殿上宮の訪問日がひっくり返って逆になっていました。従って
大トリを務めたのはクリムト作品が展示されているこのベルヴェデーレ宮殿上宮です。訂正してお詫び
いたします。




宮殿上宮のオーストリア・ギャラリーでたっぷりクリムト作品を鑑賞した後は、宮殿内のカフェでその余韻に
浸り、広大で優雅な庭園にてしばらくまどろむのでした。

ほどなくランチタイムが近づき、今度は本当のウィーン最後のイベント、正統派ウィーン料理をいただくべく
レストランへと移動です。と、現地に着いてビックリ、前夜訪れたお店だったんですね。今度は地下の大広間
へ案内され名物ツヴィーベルローストブラーテン、豚肉のソテーたまねぎソース&クリスピーオニオンリング
添えで締めくくりです。

個人とツアーの食事の大きな違いも勉強できたウィーン最終地点、ここから約4時間長丁場の旅の始まり
です。我々を乗せて向かうはお隣の国チェコにある世界遺産の町です。走行距離270kmはツアー中日で
少々お疲れ気味で満腹の皆さんを、即効で夢の世界へとお誘いするには充分な距離と時間でした。

途中延々と続く莫大な数の風力発電機を眺めながら、うつらうつらとしかけたところでバスはトイレ休憩の
ため停車します。





日本のようなサービスエリア・パーキングエリアの類の代わりに、こうしたガソリンスタンドが一定距離
間隔であります。ガソリンスタンドといってもディーゼルエンジン搭載車の多いヨーロッパでは、トラック
と合わせて軽油スタンドと呼んだ方がいいかもしれません。

再びハイウェイへと戻り、平坦な風景がやがて起伏と緑がある牧歌的な風景へと変わって行った頃、
小高い山間にポツリポツリとカラフルで可愛らしい家々の集落が視界へと入ってきました。

下道を少し登ってまた下り、川のせせらぎが聞こえてくる駐車場らしい所へバスが入って行き、よう
やく目的地に到着です。バスから下車して思いっきり身体を伸ばすと、なんとも言えない美味しい
空気がすぅーっと入ってきて、頭の中も徐々に覚醒していきます。

ふと気が付くと、駐車場にはやたらとビールが所狭しと積み上げられていて、大きな?マークがポカッと
頭の上に浮かびますが、それよりホテルらしきものが見当たらないので、一抹の不安が?マークを吹き
飛ばしてしまいました。



なーるほど、そう言うことでしたか! タクシーといっても我々のためではなかったのですね。

身軽なら少々歩かされても文句はないとばかり、一行はホテル目指して今来たゆるい坂道を登ること
10分、やがて先程のせせらぎの正体が見渡せる橋のたもとにあるロッジ風ホテルに到着です。

アルプスとはいかないまでも山間に開けた小さな村という感じで、さしずめプチ上高地と言ったところ
でしょうか。特にチェックインした私たち夫婦の部屋がロフトみたいだったので、余計そう感じたのかも
知れないですね。

荷解きもほどほどで夕食の時間が来ましたので、一行は再びホテルを出て今度は町の中心にある
広場へと向かいます。




なんだか歌声酒場のようなレストランで初めて飲んだチェコビールはなんと、ミネラルウォーターよりも
安かったのですよ! なんと皮肉な巡り会わせか。もう一杯行きたいところをグッと抑え、これまた超
お安いワインへスイッチするのでした。『呑んべい天国』、観光地でこの値段ですから、まさしくこの国
にはピッタリのキャッチフレーズではないでしょうか。



食事の後、まだ観光客で賑やかな目抜き通りからふと目を逸らすと、ご覧の様な光景が。日がどっぷり
と落ちてからは肌寒くなった真夏の世界遺産村、ほろ酔い気分でそぞろ歩くには大変気持ちの良い持っ
て来いのスポットです。



ホテルの直ぐ傍を流れる川に架かる橋の上でしばらく黄昏ながらの一枚。美味しい空気となんとも冷や
っこい風に後ろ髪を引かれながら部屋へと戻ると、バタンキューでした。