揺れないベッドがかえって妙な感じではありましたが熟睡には成功したようです
この国へ来て初めて味わう朝らしい朝の空気は凛として冷たくとても新鮮です
チェックインカウンターが目と鼻の先にあるだけに朝食もゆっくりと楽しめました
名残惜しい旅となりましたがヘルシンキ経由でいよいよ帰国です


ヘルシンキ・バンター空港まではおよそ2時間半のフライト
機内食がランチとなる絶妙のタイミングとなり無駄が省けます
大規模な拡張工事が進行するバンター空港にフィン・エアの意気込みを感じます
日本のラーメン店まで進出しており今や日本から欧州各地へのハブの座を確立したようです




今月夫婦でこの地を訪れる予定だった直ぐ上の姉にLINEで現地レポをして
旅行気分を盛り上げてあげようとしましたが結果は新コロナのせいでキャンセルです
そうこうしているうちに機上の民となってテイクオフを待つのみとなるのですが
この時期出発前に各機材には大切な処理が必要となるのでした




隣でその処置を受けていたフィン・エア機を撮影してみるとこんな感じです
機体の着氷防止に溶液を散布しているところです
着氷雪を落とす風景は千歳で見たことがありますがこれは初めて見ました
その後搭乗機は定刻で離陸し10時間弱の準長旅の始まりです


飛行ルートは概ねフィンランドを北上してからシベリア経由で成田という具合で
フィンランド北部からシベリアへかかる辺りまでは北極圏を飛行しています
夕食が終わりくつろいでいると機長の機内アナウンスが流れてきました

「皆様、只今左手にオーロラが綺麗にご覧いただけます」

この瞬間、機体が左に大きく傾いたかどうかはわかりませんでしたが
大勢の乗客が左側へ殺到しようとしたのは間違いないのでしょう
私の座席はA、つまりベストポジションにいるはずなのに何も見えません
恐らく暗いコックピット内で左側に座る機長にはレベル4あたりが見えたのかもしれません


またしても運に突き放されてしまったのか、泣きっ面に蜂
仕方なく観始めた映画の1/3程が終わったときでしょうか
担当のCAさんが私たちの所へやってきて少し興奮気味に、しかし小声で言うのです


「今、出てますよ! 左側をご覧下さい!!」


恐らく私たちの前後右側に座る人たちにはこの会話は全く聞こえていなかったはず
私は咄嗟に足元のバックからカメラを引っ張り出し窓から確かに見える長い白い雲を撮り始めます
機内の照明は落とされてはいるものの窓へ映り込む物は実にさまざまで
おまけに翼の赤い警告灯の点滅も付き、しかも最悪なことに飛行機は動いているわけですよ





せめて開放している間手ブレだけは最小限にと息を止めながらの挑戦が上のショットです
肉眼ではタダの白い雲ですがレンズを通せばこの通り、緑のオーロラが見事登場!
別のショットをトリミングしてみるとこんな感じです




完ぺきではありませんが、やりましたよ、ついに
こんな事があるもんなんですね


飛行機はほぼ北極圏を外れようとしていますが機外ではまだ白い雲のショーは続いてます
何とかもっと暗くして取りたい一心、今度は妻に隣から助太刀を依頼
ブランケットで私ごと覆ってもらいながら撮影に挑みます
傍で見ている人たちには何やってるんだと滑稽にしか映らなかったことでしょう





二人の共同作業の結果が上の一枚です
40分ほど白い雲は途切れることなく夜空に浮かんでいたはずです
何度も数十秒間息を止めながらの撮影でドッと疲れが襲って来ましたが
最後の最後、土壇場でこのような光景に出会えたのはほぼ奇跡に近い事象のはずです


オーロラには1から5の出現レベルがあると以前にも書きましたが
今回私が観測したものはレベル1と2の間ぐらいだったのではないでしょうか
レベル4から5ともなれば肉眼でも緑色に綺麗にみえるということですから
生きているうちにぜひ一度、お試しいただきたいものです


ちなみに、新コロナ禍が終息し冬季に欧州旅行へシベリア経由でお出かけになるなら
往路の座席は右端、復路は左端をキープしてください
オーロラは北極星方向に出現しますからね


ということで、これで旅物語の綺麗なオチとなりましたでしょうか
写真でよく見るオーロラとまではいかないものの、実物はこの眼でハッキリ捉えました
妻や吉報を運んでくれたCAさんにもカメラのモニターで見てもらいました


成田到着と同時に妻が受け取った父親の訃報でしたが
あのオーロラはもしかして、と葬儀社へ向かう車中で妻とそんな話になっていました