今週の日経朝刊は大学とユーロネタが満載です。
『大学開国』と冠した特集記事から触って行きますが、これは以前『この国を憂うシリーズ』でも触れ
ました、大学9月新学期の話題の延長戦です。

あの東大の発表以来、結構いろんな記事やコラムが登場して来て、それこそ物議を醸し出したなと
言う感じになって来ました。件数には限りがありますが、面白そうな物には極力目を通すようにしてい
まして、そこで一様に語られているのがやはり『仏作って魂入れず』の共通した筆者達の危惧です。
22日朝刊の特集横にあった記事を読んでいる限り、行く末を案じずにはいられません。

シリーズ『大学開国』の初回のくだりはやたらグローバル化を叫んだもので、人材のグローバル化に
はどうしても9月新学期だなというニュアンスを付け過ぎているきらいがあります。それがあたかも
産学両者が切望しているかのような・・・・・。

     果たしてそうなのかぁ? グローバル化っていったいほんとうはどういうこと?

素朴な疑問が大きな頭をもたげます。
それに輪をかけるような記事が続きます。9月新学期にすると海外からの留学生が増え、日本人学
生は海外へ飛び出しやすくなるのだそうです。 本末転倒!

というのは、ある週刊経済誌のコラムに書かれていた統計の話ですが、アジアからアメリカへの留学
生の構成で、日本は中国や韓国に比べ恐ろしく少ないそうなのです。先の二国はその数が右肩上
がりなのに対し、日本は予想通り右肩下がりです。

では逆はどうかというと、日本の留学生受け入れ態勢の充実度は世界第8位なのだそうですが、
その大半は中国・韓国・台湾からと偏重気味で、欧米からの留学生ともなると一番多いアメリカから
でもなんと、たったの2300人ほどにしかならないということです。このように偏った傾向はグローバル
に見て、日本の大学には留学するだけの魅力が無いのではと例を挙げて疑問を投げかけています。

また、このコラム筆者はいま日本の大学がすべきこととして、『教育密度』を上げよと訴えています。
日本の大学生はアメリカ人学生の半部も勉強していない、だから学生が本来やるべき勉学に勤しむ
よう直ぐに教育改革しろと言うことですね。日本人学生の目を血眼にするような改革は果たして可能
なのでしょうか?

新卒者の就職内定率70%というのは危機的状況です。
引き受ける企業も『勉強しない大学生』のレッテルの陰に不幸にも埋もれてしまっている、『できる
学生』を発掘するのに必死なので、選別はさらに厳しいものとなった結果がこの数字だと思います。
しかしこの難関を突破していざ入社しても、『こんなはずじゃあなかった』というミスマッチが発生して
しまうのも現実です。

入試に成功して希望校に入学、泣く泣く滑り止めへとスライド入学、何とか探し当てて体裁入学って
な具合で、実はこのミスマッチとやらは既に大学から発生しているはず、というのが私の持論です。
一回入ったら退学しない限り、自分の肌に合わなかったその学校で卒業までを無駄に費やすという
非生産的な現象を回避するためにも、アメリカでは一般化している『ナンバリング制度』を一刻も早く
導入すべきです。

前にも述べたように、共通する授業の取得単位を大学間で『持ち運べる』というシステム。つまり
大学のトランスファーシステムの導入です。各大学は受け入れるためのハードルを独自に設定して
転校希望者の審査に当たります。不本意にも当初希望レベルの学校に入れなかったとしても、
もう一度このトランスファーシステムを利用して、本来の希望校への転入を試みる。当然ながら現在
よりさらに上を狙うなら、日々の成績を常にトップクラスにキープしておく必要などがでてくるため、
ちゃんと毎日勉強する(当たり前ですけど)。これで自分が本当に何を学びたいか、将来どんな職業
に就きたいか、なんて前出の中・韓・台各国をはじめ、世界で学ぶ多くの留学生みたいにきちんと
考えられるそんなガチンコ大学生が増殖すれば、リクルートする側の企業も喜ぶんじゃあないので
しょうか? それにアントレプレナー(企業家)発掘にも一役買いそうですし。

加えて教育する側の素質にも触れられてましたが、聞くところによると大学の教鞭をとる為に1万人
以上もの『ドクター・ディグリー・ホルダー』がスタンバイ状態だとか。つまり教えたいけど椅子が無い、
博士っていうやつですね。こういう人たちにはぜひ大学側としても、オーディションしてもらって明日の
優秀な『先生』を発掘してもらいたいものです。

『大学開国特集』、恐らく明日が最終回だと思うのですが、ちなみに今日の第4回にはどうやら各
大学で9月新学期の議論が白熱し出したという記事が書かれてました。特別委員会を設置して議論
を集中してやって行こうってな感じですかね。
委員会のメンバー全員が勿論留学経験者だといいんですが・・・・・・・・。