タックスフリーの手続きもあったので少々早目にチェックアウトして、フィウミチーノ空港へ
タクシーで向かいます。15年前とは全く雰囲気が変わったタクシーのボディーには、
空港までの料金が大きく明記されており、外国人旅行者は安心して
利用できる明瞭会計となりました。
タックスフリーの手続きは中国人観光客の行列で待たされることも無くスムーズに運び、
程なく軽快に出発3時間前のBAチェックインカウンターまで来たところ、
係りのお姉さんがツカツカと寄って来て一言、
お乗りになる便はいつも遅れます。乗継便を他の選択肢へ変更することは可能ですか?
何言ってんの、おねえちゃん、と思ったと同時に、カウンターのオジサンも気にしないでこっちさ
来いって手招きするものですから、そのまま搭乗手続きを済ませ出国検査場へと移動します。
入国検査はフリーパスだったのに、出国検査はパスポートにハンコまで押すという気の入れよう
です。手荷物検査は行きと同じ所だったので、引っ掛からないコツを屈指して楽々通過です。
今にして思えばこの何言ってんのお姉さんの一言は、悪魔のささやきだったのですね。
ラウンジへ入室するや否やカウンターのお姉さんが、
『この便の出発は1時間弱の遅れを見込んでおります。』
いきなりの直球が飛んできましたが、接続時間にまだ少しだけ余裕があったので、
この時点ではゆっくりくつろごうと飲食類をチェック。がしかし、飲み物はいいとして
食べ物がとてもランチになる代物ではありません。仕方なくターミナルの
ファストフード店で食べることにします。
しかし、店内は満席だったためフォカッチャとサラダを購入し、レジで残った小銭処理をすべく
日本式つり銭が細かくならない支払い方を実行します。大きさは違えど1と2ユーロ玉は
良く似てます。計算上ではお釣りが戻ってくるはずなのに、レジのおばさんは涼しげな顔をして
バックヤードの仕事へ戻ろうとします。
このあとおばさんと少々スッタモンダしてお釣りは取り戻したのですが、イタリア人は
やっぱり血の気が多くてショートテンパー(短気)だと確信します。
ラウンジへ戻る頃には平常心に戻っていましたが、カウンター越しの
お姉さんの一言で敢え無くKOされてしまうのでした。
Mr. 〇〇〇, you'll miss your flight !!
気を取り直して聞けば3時間遅れるそうで、ロンドンで乗り継ぐはずだった日本へ帰る
JAL便にはもちろん間に合わないという事実を柔らかく解説してくれるのです。
BAは同じワンワールドのアライアンスですから、この辺りの手配は宜しくやってくれるだろうと
信じて、潔くい意気消沈する家内とここでおとなしく出発を待つことにしました。
結局、成田まで行くはずだった荷物のタグをロンドン止まりに変更して、新しいタグの
控えを貰うのにも手間取り、疲れ切って搭乗した飛行機がヒースローに到着したのは、
なんと成田行きのJALが出発してから既に1時間も経ってからでした。
上空から捉えたパリ・オルリー空港!?
飛行機を降りたら係員の指示に従ってください、そう言われてたからてっきりドアの外で
スタッフが待ってるものだと信じて疑わなかったのだけれど、いっこうにそれらしき人物は
見当たらず。そうだ、ここは日本じゃないんだった、と自分に言い聞かせながら
次に取るべき行動を頭の中で整理してみます。
当然ロンドンで一泊させられるんだから、荷物をもって入国手続きをしなければいけません。
それからこういうケースを取り扱うサービスカウンターを見つけ、そこで全ての手続きを
行なう。数年前、シリコンバレーへツアーで視察旅行に行った時の苦い教訓が
なんとこんな時役に立ってしまいます。
だだっ広い空港内で見つけたこれまた大きなサービスカウンターには、もう既に
長蛇の列が出来ていて、見ただけでも疲れが10倍帰ってきます。
クッチャべってた係員に事情を説明すると、2・3組しか待っていないロープが張られた
一番隅のカウンターへ案内されました。
と言っても、元々ステータス会員だからこのような特待はあってしかるべきとばかり、
その旨水のペットボトルを配りに来た係員に
『ステータス会員用のカウンターは無いんですか?』と、普通に聞いたつもり
だったのだけれど、帰って来た答えが
『これだけ沢山の人が待ってるのに贅沢言ってんじゃねぇ!』
とばかりのお言葉に、返す気力がもう見つかりませんでした。何の為のステータス??
それでも40分ばかり待たされて、ようやくこの夜の宿、食事、バス代のクーポン、そして
振替の日本行き航空券を受け取って宿までのバス停に移動して乗車。しかし、このバスが
また大変で、何やらインド人の団体さんが大きな荷物と一緒に大勢乗り込んできます。
疲れた表情はありますが皆平然としている、諦め切ったマハラジャかぃ!?
日が替わる少し前にようやくありついた夕食、しかし、なぜかDJと喧しい音楽が
流れるクラブ風バーでのこと。隣り合わせたデンマークから来たという白人夫婦の旦那が
話しかけて来たので事情を説明すると、自分たちも乗るはずだったボンベイ行がキャンセルに
なったとか。なるほど、だからマハラジャかと、訳の分らない納得をして取り敢えず
別清算でビールを注文し、一気に空きっ腹へと流し込みます。
これで、本当なら今頃JALファーストクラスの楽ちんフラットベッドで寝っころがってた
はずなのに、などと込み上げてくる持って行き場所のない悔しさが晴れるわけでは
なかったのですが、出発が1日延びたというのに何事も無かったかのように
決して美味しくもない即席ディナーにパクついてる周りの人達を見て、
『ああ、慣れてるんだ、きっと、こういうの...』、とつい思うのでありました。
ホントは乗客に慣れさせちゃあいかんのですがね...ト・ホ・ホ。
ユーロが使えないここイギリスでビール一杯をカードで支払い、家内と部屋へ戻った時は
もう既に日付が替わっています。いくらなんでもさすがに疲れ果ててしまい、
食べて直ぐではありましたが二人ともベッドに撃沈でした。
この悔しい記憶を記録に残すためにも、あと一回エピローグ2へつづけます