食は広州にあり、という言葉があるのですが
その広州広東省の一角にあってイギリスの統治下から始まった香港
列強の租界地の存在が示すようにその歴史の序章より欧州の影響を強く受け
独自の中華スタイルが料理においても完成されていったと言えるのでしょう
だから私にとって食はやっぱり香港にあり、なんですよね


前号でちょこっとだけ触れた初日ホテルの広東レストランでの夕食は
凝った演出などは一切なく老舗風にストレートの素材勝負で来ました
この夜の料理長おすすめの一品は姫アワビのココナッツスープです
鶏ベースのだしに姫アワビだけが入っているという真、オーソドックス
その他オックステールの土鍋煮込みやイーフー麺などを楽しみました




- 蓋を開けておくべきでした -



翌朝の朝食はホテルのレストランで自助早餐
沖縄で体験した朝食ブッフェがピカイチだったとお伝えしたばかりでしたが
いやはや二週目にして早くもその座を奪い取った今回のブッフェ
中華メニューは各種麺類とその具の豊富さで群を抜いており
自分で選んだ素材と麺を調理して係りがテーブルまで運んでくれるというおまけ付き
そして欠かす事ができない点心の数々も中身の海老がこれまた大粒のプリプリ





チャーシュー饅、海老蒸し餃子、海老湯葉巻き、肉団子湯葉巻き、ニラ海老蒸し餃子、
そして最後に一番下の細長いのが海老入り腸粉特製タレかけです
この中にあってこの腸粉、見かけからしてお世辞にも美味そうとは言えません
が、海老蒸し餃子同様に素材の味だけを楽しむというまさに点心の原点と呼ぶべき一品です


ビクトリア湾の海底を抜け尖沙咀に繰り出ししばし妻の買い物に付き合います
セールも二週目に突入すると熱気も醒めてきたのか服飾関連の店内の客は疎らでしたが
代わって日本のバブル期を彷彿とさせる宝飾店にできる行列は異様でした
Harry Winstonの前にさえ数名の入店待ちですからちょっとたまげてしまいます






朝から8,000歩強と歩き回ったらやっぱり空いてくるお腹
Gateway にある China Tang に予約を入れておいたのでここで飲茶ランチです
今年9月に支店としてオープンしたばかりの人気店だということです
友人が夕食に何やら特別な処へ連れて行ってくれるということで
飽きずにこれまた点心とミニ麺で暫し軽くいっぷくです





初めて食べた湯葉巻き海老をサクッと揚げ腸粉で包んだこの店特製





潮州風ニラ蒸し餃子は広東風の油でこんがり焼いたものよりあっさりしてます
同じ広東省にあって刺繍のハンカチで有名な汕頭がある潮州
料理は全般にあっさりとしていて潮州蟹の丸蒸しは代表的メニューです
残念ながら日本では殆ど食べることができない潮州料理の数々は
香港を訪ねた時のお楽しみの一つとなっています


全般的に貧しかった潮州からは大勢の有名大富豪の華僑が誕生しています
全世界で活躍するユダヤ人同様、潮州人の商才はズバ抜けているそうで
さまざまな語録も誕生し受け継ぐ者のバイブルとなっています





少し甘みのあるパイ生地でミンチ状のチャーシューを包んだものです





そして香港へ来ると必ず食べる牛肉麺で、今回は台湾風でいってみます
日本人には抵抗が大きいスパイスの八角がしっかりと効いています
香港風はあっさりダシに極細縮れ麺となり、友人とよく屋台で〆に食べてました


昼食後は別行動ということで私はそのままホテルへ戻り夕食まで休憩し
妻はというと、説明するまでもなく知り尽くした商業エリアをハントです
飲まなくなった友人に会う前にクラブラウンジで独りハッピーアワーも楽しむ私でした






昔二人でよく遊んだ懐かしの場所で友人家族と落合い
観光客にはあまり知られていないローカルエリアの一角にある店に入ります
何となく怪しげではあるもののどこかノスタルジックな空気漂うこの店は
2年ほど前から香港で人気が上がり出したSteam Seafoodを食べさせてくれます
つまり蒸し焼き海鮮料理で油を一切使用しないヘルシー感が人気の秘訣です


生け簀で泳ぐお目当ての品をピックアップして料理してもらうまではよくあるパターン
友人夫人が選んでくれたのはグリーンロブスター、渡り蟹、ジャンボマテ貝、見知らぬ貝etc
ニンニクと極細春雨を乗せるのがこの店のスタイルで香辛料の味付けは殆どありません
素材のエキスに塩っ気とニンニクの味のみという素朴さで
唯一、見知らぬ貝の身の上になぜかペースト状にした黒トリュフが添えらえていました









底鍋に生タイ米、さつま芋、牛リブを敷き詰めその上に穴ポコ中敷きを乗せたら準備完了
最初に蒸されるのはこれまたなぜか茶碗蒸し
蓋を被せ電源オンにすると勢いよく蒸気が舞い上がって料理開始です
先ほどの海鮮たちが次から次へ蒸し上げられ私たちの胃袋へと収まって行きます







- 蟹を食べているときはさすがの香港人も寡黙になるという事実を発見 -



最後は上からたっぷりの海鮮旨みエキスをたっぷり浴びたお粥さんが鍋底で出来上がり
香港風締めの雑炊といったオチで新派料理は終了します
食の制限をしているにもかかわらず友人は大そうお気に入りで山盛りお替りしてました
連れてきてくれたホスト本人が実は一番喜んでいたのが印象的で
必ず近いうちにまた来ると言い残し上機嫌で店を後にしたのでした


顔色良しに食欲旺盛な友人、もう一緒に飲み歩くことはできなくなったものの
腎臓一個を無くしたとは思えない回復力に妻と二人完全脱帽の夜でした
医者から病名を告げられ三日三晩泣き腫らしたという夫人も以前の明るさを取り戻し
幼い愛娘と三人、再び元の生活を定期健診を新たに交え幸せに送っているとのことでした


3時間以上にも及ぶ久し振りの会食は蟹のパート以外は会話も弾んで楽しいひと時となりました
次回はぜひ日本で会おうと金鐘駅ホームにて堅い握手とハグのお別れでした