サラブレッドのことを書かれてるExtra-Low さんから本日Niceを頂いたのを
きっかけに、この話題を思いつきました。正直助かりました。

そうなんですね。本日はこれから天皇賞レースなんですってね。
なんですってねなんてどういうことよ? と競馬ファンなら突込み処でしょうが、
競馬にはからっきし縁の無い今の私には、キング・カズのフットサル初ゴールの
ニュース同様、かなり遠い存在となってしまいます。

ところが、そんな私にもこのサラブレッドと絡む唯一の出来事があるんです。

時を遡ること三十と数年、留学先から夏休みを利用して日本へ出稼ぎに来ていた
時の事です。雇い主である親戚のおじさんから、ライオンズクラブの海外交換
ホームステイ・プログラムで、カナダから来日した女子高生達の一人に、通訳として
同行する仕事でした。

競馬ファンにはお馴染みでしかも垂涎モノである滋、賀県栗東市にあるトレーニング
センターを見学がてら、そこの厩舎に調整のため預けられている叔父の馬達にも
ご対面となりました。

競馬場の恐らく数倍もの広さを持つ通称『栗東トレセン』で、実際この目で直に
競走馬が走る姿を目の当たりにし、その荒々しい息遣いまで聞こえてくる迫力
たるや、筆舌に尽くしがたいものがあります。方や厩舎内でのんびりと過ごす
お馬さんたちは、物静かで懐っこく、しかし、毛並みや艶の鮮やかさはさすが
『サラブレッド』と言われる所以です。

さて、このカナダのお嬢さん、実家がこのトレセンの数十倍はあろうかという
牧場です。ですから馬は家族同様で、しかもマイ・ホースが居るということ
でしたから、扱いは勿論手馴れたものでした。

他方、私ときたらやっぱりへっぴり腰。生き物は苦手ではないのですが、馬は
デカイ! そんな私にも臆することなく近づいて来るサラブ君だったので、ここは
お愛想で恐々撫で撫で。そこへ調教の人が私にカットしたニンジンを手渡し、

    これ、手のひらに載せて食べさせてやってよ。
    そうそう、指は全部揃えて外側へ反らせて、口元で滑らすようにね。
    でないと一緒に食べられちゃうから。わっはっは。

言われたとおり利き手の右手の平に、貰ったニンジンを載せると、待ってましたと
ばかりに近づくサラブ君の口元へと、教えのとおり指を反らせて、滑らせて...

のつもりだったが、その瞬間

     あつ、痛たっ・た・た.....。

何故か反りが足らなかった中指の第一関節が、ニンジンと共にサラブ君の
口内にあり、あの上下の歯で『擦り合わされて』いたのでした。

馬は噛むのではなく、歯を左右に擦り合わせるように餌を食べるんですね。
って、冷静になっている場合じゃあないのです。指が無くなるかも知れない。
幸い中指だから良かったものを...、なんてバカなこと考えている余地無し。
引っ張っても抜けないことが直ぐに判かると、サラブ君の歯が真ん中に戻った
一瞬、見事脱出成功!

これがほんとの欠指覚悟の決死の脱出劇。周りの人たちも怪我が大したことなく
ほっと一安心です。でも、お金がかかっているサラブ君が私の指よりも優先された
一幕でもありました。
そして、わたしのアメリカ長期滞在が災いした一瞬でもありました。
やはり、中指の反りが足らなかった事、反省しきりな一日でもありました。


さあ、お待ちかね、15時50分出走の天皇賞レース。
また、多くの人が泣いて笑っての人生劇場を繰り広げるのですね。
そして私はというと、

     GⅠの 声が擦るたび 想い出し

             うずく中指 そっと見つめる