徴兵法の復活-Draft Again [留学生日記]
日本へ帰国している間に、アメリカでちょっとした大きな出来事がありました。
それは1980年7月にアメリカ上下議会が選抜徴兵法の復活を可決し、時の大統領であった
カーター氏がこれに署名して成立となったというニュースです。
簡単言うと、18歳から25歳の米国男子は連邦選抜徴兵登録庁と言う機関へ徴兵登録する事を
義務付けた訳です。 これを拒否したものには罰則規定も付けてと言うものです。
当時はベトナム戦争も終結して暫く経ち、直ぐに徴兵されて戦場へ送られるなどと言う状況では
ありませんでしたが、この徴兵制の復活を告げるポスターが、各ドミトリー男子セクションの廊下に
貼られていてそれを見ながらみんな、とりわけ新入生達が何やら話し込んでいたのを覚えています。
新入生とはあまり親しくすると言うことはなかったのですが、新学期が始まって間もないある日
私がそのポスターの前を通り過ぎようした時、ポスターの前の部屋にいる長身で金髪の一年生に
声を掛けられました。
彼の名前はアレンと言い、どこかオットリとした感じで、その体格のせいか大人びてもいました。
彼がポスターを指さしてわたしに言いました。 以下はその時の会話を思い出してみたものです。
- アレン: 「◯×△、これ、知ってる?」
わたし: 「この前読んだ。」
アレン: 「日本にもdraftはあるのかい?」
わたし: 「ないね。 幸いにも。」
アレン: 「始まっちゃったよ。登録しなきゃ。それでお呼びがかかったら行っちゃうと思う。」
わたし: 「.........」
アレン: 「とりあえず今は大丈夫そうだけど、いつまたそうなるか分らないから。」
わたし: 「なんで今さら復活なわけ?」
アレン: 「いざとなったら何人用意できるか調べてんじゃあないの!?」
わたし: 「えっ?」
アレン: 「うちの大学でも出来るみたいだから、明日にでも覗いて来るわ」
正直言ってどう受け答えていいか非常に戸惑った会話でしたが、彼ら18歳のフレッシュマンにとって
かなりショッキングな出来事だったことに間違いありません。
4歳だけ年下なのに、勉強だけでも大変なのに、何とかなんないの?
そう言う文言くらいしか頭の中に思い浮かべられませんでした。
こんな会話をしたからか、その後アレンとは結構話をするようになり、短い間でしたが私の部屋へも
顔を出すようになりました。しかし、この話題についてはトムもそうだし、マーク兄貴もそうでしたし
ラグビー部の仲間だってそうだったのですが、以後二度と話すことは無かったです。
みんなどんな気持ちで毎日を過ごしてたんだろう?
傍目ではいつもと変わらぬ様子だったけど。
そう、いつもと変わらないから余計空しくなったのは私だけだったのでしょうか?
週末のアニマルハウスはいつもと同じように騒がしく、そしてビール臭かったのでした。
-この年同じく7月に行われたモスクワオリンピックを、日本はアメリカに賛同して
ボイコットしたのでした。原因はソヴィエトのアフガン侵攻でした。-
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