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疑似体験 [続・独り言の抽斗]

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手術後ICUで目を覚まし、せん妄テストに合格(恐らく)した後最初にやったのが現状チェック
まずは視界の範ちゅうにある楽勝の左足から始めて徐々に圏外の頭部まで手で触れるところはすべて
少々時間はかかったものの自分の身体ががんじがらめの状態であることは容易に理解できました
そして今さらの確認でしたが自前の下着はどこかへ行き、代わりにしっかりとオシメが装着されてました


生まれて二度目のオシメ生活、さていつまで続くんだろうかと考えると色んな心配事が湧き出てきます
自歩行トイレは不可なので小の排泄は装着されたチューブで、そして大はオシメの選択肢しかありません
水分は勿論の事、栄養摂取は点滴からのみですから暫く大の心配は無かろうという安易な考えしかなく
1週間はこの状態が続くであろうという予想の下、それくらいの便秘は致し方ないものだと妙なコミット


無理くりの一般病室移動した3日目からは水分と栄養補給は鼻からチューブでに切り替わりました
点滴材同様プラバッグに入った正体不明の液体でパンケーキに似た香りがするのだということでした
朝昼晩同じものが容赦なく鼻からチューブで挿入されるもののたかが液体、腹に溜まる感は全くないのです
ですからこれが腸内で固形化していくなんて誰が想像できたでしょうかと6日目まではまだまだ余裕でした


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4日目くらいからでしょうか、ガスの放出が時々あったので胃腸は順調に働いてくれていると安心でした
匂いはというと全く感じなかったので後から考えると室内は相当なものだったんだなと苦笑モノです
7日目の朝辺りから下っ腹の張りが強くなりガスの出力はどんどんパワーアップしていくばかりです
毎度便通の確認をする先生や看護師さん達の心配レベルは鰻登りでさすがの私も不安が募ってきます


寝ながら排泄なんてそんな容易いものでないことは経験してみないと分からないとつくづく実感しながら
この日はどうやったら上手く行くのかのシュミレーションに明け暮れたのちその晩覚悟を決めたのでした
就寝前に液状の下剤を多めに服用する許可を貰っていざ鎌倉、決戦のゆくえや如何に?
8日目の昼食注入後にようやく効き目が出てきたのか急に下腹が痛くなってきますが「蓋」は強固なのです


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結局開栓はベテラン看護師さんの指に委ねられたものの計6回にわたる格闘の末8日分の処理は無事終了
担当の看護師さん達には大変な迷惑をかけてしまいましたが久し振りで味わう爽快感はたまりません
うら若き乙女の眼前にも露わな姿を曝す恥じらいなど何処かへ素っ飛び悟りを啓く機会でもありました
バッチリ掴んだ寝ながら排泄のコツは翌日から早速効果を発揮し自力トイレまで快適な毎日となりました


今回はリハビリパンツも着用したりで介護の世界を垣間見るという貴重な体験となったわけです
病気のためと割り切ることはできたのですがこれが未来永劫天国へ召されるまで続くとなると話は別です
以前から妻とは要介護者になって周りに迷惑をかけながら生きていたくはないなと話してきましたが
今回の入院生活で改めてその思いが強固となり明らかに死生観まで変化していくのでした


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3Dの威力 [続・独り言の抽斗]



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それにしても毎日容赦なく襲いかかってくる猛暑の嵐は病み上がりには堪えます
日中家にいると熱中症になること間違いなしなので会社に避難した方が安心とばかり
極力出勤するように心掛けており月も変わったと言う事でギアをアップさせて行きたいところです


手術後2ヶ月、退院後1ヶ月が無事経過し現在のところ特に目立った異常はなさそうです
傷口に専用の保護テープを貼り付ける作業が只今朝の日課となっておりこれが結構面倒なのですが
効果の程はなかなかのもので傷口の色が徐々に薄くなっていくのがよく分かります
難を言えばこの暑さでテープかぶれなるものが少々発生しており妙な痒みと闘っています


ところで通常、手術をする前に医師からその説明を受けるのは勿論のことで
その際レントゲンやCT画像をもとにここをこういう風にしてみたいな解説がなされ
医師との間でQ&Aコーナーがあって患者は少しでも不安を取り除こうと努力します
私の場合、今回珍しい体験をし同席した妻も手術内容がかなり理解できたという術前のお話です


物事を分かりやすくするためのツールが2DのレントゲンやCT画像ではなくなんと3Dの縮小模型です
私のシャレコウベが下顎の患部の状態まで忠実に再現されそれをもとに医師から説明を受けるのです
ここからこういう風に切除してここはこうなって、という主治医(執刀医)の説明が理解しやすいのです
歯の形や並び癌で侵された顎骨の部分まで忠実に再現されているため術後の姿が容易に想像できます


移植に使用した腓骨も然りでレントゲン画像をもとに左右両足分が忠実に再現されており
それをもとに皮膚や血管の状態と共に使用する脚を最終決定するという算段となっていきます
素人目から見ても明らかに左脚の方が太いのがわかり他に問題もなかったので決定の運びです
レプリカではあるものの自分の身体の一部の骨を手に取って眺めるという体験はなかなかできません


そこで口腔内ケアの際担当の歯科衛生士さんとの雑談で3Dモデルの使用後の処理を聞いてみました
どうやらしかるべき期間を経て廃棄されているとのことなのでそれならお譲り頂けないだろうかと
素朴な疑問をぶつけたところそれいいねと笑顔の賛同を頂戴したのでその内主治医にお願いしてみます
大変かつ希少な体験の証として自宅に永久保存してよろしいと妻の許可も取り付けました


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変化を愉しむ [続・独り言の抽斗]



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山荘のリビングでまどろんでいると時折珍客が遊びにやって来ます
如何なる昆虫たちとも仲良くなるというのが山荘生活の鉄則であり必須条件の一つでもあります
ダイニングの窓辺りでスズメバチの羽音が聞こえても落ち着いて箒に絡め逃がしてやる勇気が必要です
山荘生活において殺生は原則禁止として綱吉公に倣う生活に浸る努力を惜しみません


ガーデニングという括りの自宅での庭弄りやベランダ弄りが紹介されて幾久しいのですが
地元のラジオ番組内で土弄りの事を「アーシング」と紹介していた吾人がいました
Earthingというスペルになるのでしょうか、確かに土弄りですから間違いはないようです
言ったもん勝ちよとばかり、私だってカルイザワってんだからね


何もしていない時は極力悪い方の脚を上げておくようにしてねと言われて退院したものの
仕事の最中や車に乗っている時などはなかなかそういう訳にはいかず疎かになりがちです
そうすると左脚の甲の辺りが少し浮腫んできてしまい家へ戻るなり慌ててソファで伸ばします
楽しめたもんじゃないこの変化ですが一生のお付き合いとなるのでしょうから仕方ありません


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1年余り殺風景だった裏庭のオープンデッキをちょっと賑やかにしてみようという小道具たちです
本当は去年の夏前に届くはずだったガーデン家具はコロナのせいで山荘へやって来たのは昨年暮れでした
サビさびの代物は薪を焚いて愉しむ屋外暖房兼ピザも焼ける調理器具
耐候性鋼板、またの名をコールテン鋼と呼ばれる錆を愉しむ今玄人の間で人気急上昇の鉄板素材です


意匠に拘る建築家が建物のアクセントに使用することが流行りらしくその派生商品みたいなものです
鋼の表面に銅、ニッケル、クロムを添加して出来る錆が保護膜となって従来の錆から保護するという仕組み
見た目の好みがあるので使用は思案のしどころではありますが違いがお好きな方にはお勧めかも
写真には入ってませんがデッキの傍の軒下に同素材の組み立て式薪スタンドがスタンバイしてます


夏の町内の大混雑を避けるには定番のBBQにご登場願い山荘でゆったり食の時間を愉しむべきです
従来のBBQセットで専任の焼き方大臣がゲストと伴に食事ができないというデメリット解消のため
円卓の天板がそのまま鉄板に、中心の火種が網焼きに変身するという秘密兵器を間もなく導入します
来月私の慰問[?]にやって来るという義弟家族が最初のゲスト、森遊びの演出道具には充分でしょう


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地獄の沙汰も正気次第 [続・独り言の抽斗]



お見舞いでも滅多にご縁のない秘密の部屋と思しきICUで貴重な体験をしました
印象としては機械や機材が所狭しと並びけたたましい電子音が漏れ伝わる喧しくせわしない部屋
担当看護師長の事前レクチャーではとにかくやかましいから我慢してというものでしたが
実際は一人分のスペースがゆったりあり機材と言えば心電図、バイタル、サチュレーション用の例のやつ


気管切開してるので頭の後ろには吸引装置がスタンバイしてそのポンプの音が雨音の様で紛らわしい
頭は動かせず左足は膝までギブスシオーネ、首から2本左足から2本そして排尿の1本とチューブだらけ
おまけに術後の発熱で身体は火照ってなんだか息苦しくもありこれが何日間か続くのはほぼ地獄絵図
気切からは不定期にしかも頻繁に不純物を吸引してもらわないと生命にかかわってくるのでナースコール連発


意識だけは本当にしっかりしている私が本当に戦わなければいけない敵、実は伏兵の存在があったのです
目をつぶるとそこには4Kの総天然色で世にも不思議な光景が眼前に広がっていくことに気が付きます
地球上の風景では絶対有り得ない摩訶不思議な光景がスローモーションで展開していく中
右隣の空きベッドに手術を終えたばかりの患者が運ばれて来ていきなりせん妄防止チェックが入ります


名前は看護師さんが呼んでるのですぐ分かり次の本日の日付でさっそく引っかかってしまいます
それでも何度か繰り返す内に場所や生年月日はクリアするものの日付がどうしても引っ掛かってしまう
脳の手術を終えたばかりの様でなおさらこのテストはきちんとクリアしておかないといけません
正気でしかも覚醒しまくってる私の唯一自由な耳からこうした会話が一字一句鮮明に入ってきます


隣のオッチャンはテスト不合格につきなんと2時間おきに看護師さんから大声の追試を受ける羽目に
その内素っ頓狂な答えを繰り返すオッチャンと同じ順番でしかも大声で質問を繰り返す看護師さん
3回目あたりからいい加減我慢できなくなりますがいかんせん声を発することが出来ないので情けない
ジェスチャーだけでは通じずついに筆談用の紙とペンを要求し現状を訴えるも効果はなしの撃沈


一向に訪れない眠気と隣の今となっては騒音でしかない二人の会話と不思議で気持ち悪くもある幻想風景
だんだん自分が壊れていくのがしっかり実感できこのままでは大変なことになってしまう
そんな恐怖心が止めどなく沸き上がって来て目から大粒の涙さえこぼれ落ちて何とも情けない自分
とにかく気をしっかり保てと言い聞かし声には出ない知ってる歌を歌い続け何とか一夜を明かします


5歳年上のはずのオッチャンはいつのまにか6歳若くなって朝を迎えほどなく主治医がやってきました
祈るしぐさと眼差しでここから今すぐ出してくれオーラを発信しすると首を縦に何度も振ってくれ
病棟スタッフの全面的協力を得て私のICU脱出作戦がその日の午後決行させることになったのでした
大勢の方々に迷惑をかけてしまいましたが癌の上に気がふれたなんて洒落にもなりません


-- おかげさまで本日目出度く退院の運びとなり午後には我が家に戻れます --
今後は外来受診を通じて経過観察を行い再発モニターを行っていきます
失った歯の補填はおよそ2年後、患部の状況を見て最善の方法を取るという事です
口いっぱいに美味しいものを噛みしめることが出来るのはまだまだ先のようです


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メッセージ [続・独り言の抽斗]



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あれよあれよと過ぎ去っていったひと月、どうやら病室に戻る時が来たようです
二度目ともなると勝手知ったるなんとかで、準備は格段にスピーディーかつスムーズになります
今度出てくる時は梅雨のジメジメ・べっちょりの不快な季節となっているはずですから
衣替えはしっかりということでこの週末は冬物の片付け、そして頭スッキリの散髪です


検査や診察最優先の時間配分でも充分仕事はこなせた毎日出勤で決算の準備も完了
あとは週明けの会議で留守中の動向チェックと進行案件の確認を済ませてひと段落です
術後暫くは向かう事ができなさそうなPCですが長期戦なのでもちろん持参して臨戦態勢はしっかりと
仕事関連で迷惑をかけてしまう方々には留守の詳細を伝えて元気をいただきまくりました


元気と言えば先週の山荘滞在中あれだけは食べて帰ろうと夕食に出かけたいつもの洋風居酒屋さん
てっきりまん防で3月21日まで休業してたから来なかったと思っていましたと言う大将に
事の顛末と今後の展開の説明をするもすっかり驚かせてしまい反対に申し訳ない事をしてしました
帰りがけ玄関先で手渡された美味しい生卵の包みと激励の言葉でいつものお見送りをいただきました


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退院後一ヶ月、再び悪さを開始し始めた患部の完全退治にはギリギリのタイミングなのがよく分かります
今の内ならイケるぞということで今回の手術は切除する下顎の骨の移植も同時に行う長丁場です
本来なら数年にわたり二回に分けて行う手術ですが再発の可能性が低いという判断で実行決定となりました
切除する部分のメタル補強だけで終わる一次処置からは大きな前進ですから歓迎するしかありません


移植に使用する骨はいったいどこから?答えは左右下肢のどちらかにある腓骨の一部です
ふくらはぎに包まれている腓骨の最適部の一部を動・静脈と共に切り取って移植します
血管が伴う理由は移植した骨の育成の助長と感染症予防のためでこれがかなり大変だということです
先週末撮影したCTを元に週明け主治医とどちらの足を使うかを決めますがやっぱり左がいいですね


切り取られた腓骨はメタルで繋がるのでしょうかと素朴な質問に、そのままですよと素っ気ない先生
あっ、ちゃんと歩けるようになりますから大丈夫とのフォローに、ではスキーはどうですかともう一問に
ウッと唸り声の後にリハビリ次第でできますとの答えが絞り出されてきたので一安心でした
まさかこんな質問が飛び出すとは思いもよらなかった先生泣かせの癌患者に更なる目標ができたのでした


6月中旬頃にはまたこうして記事の投稿ができるよう優等生の療養に専念してきます
それでは皆さまコロナ対策万全の下、良いGWをお過ごしください


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屋根のない病院 [続・独り言の抽斗]



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再入院を2週間後に控え体調がすこぶる良好な内にと3か月振りで山荘にやって来ています
本日日曜日の最高気温は20℃と軽井沢にも確実に春はやって来ています
元々桜の木が少ない土地柄ではありますが開花宣言はまだのようで目にすることはありません
この時期こんなに白い浅間山は珍しいですが町や別荘地内の雪はとっくに地下浸透したようです


タイトルにあるフレーズはここ軽井沢の別名、今の私には持って来いのロケーションです
無理をしないなら普段通りの生活はOKということで努めてそのようにする毎日
若干抗がん剤の副作用の影響があった両目も元通りになって車の運転も再開しました
関越道に乗るまでと横川SAからを担当しあとは妻にハンドルを委ね普段より楽ちんのドライブです


春休みが終わり束の間の静けさを取り戻した町内の移動は至極スムーズでストレスフリー
親しくさせて貰ってる人たちに出来るだけ会って現状報告させてもらおうとあっちこっちを走り
申し訳ないとは思いつつも皆を驚かせては妻と二人いつものように振舞い元気を貰って暫しのお別れ
次回再会する時はこちらもジメジメの梅雨時になるのかなと指折り数えてみたりして


明るい内の山荘にもう暖房は必要なく木々の芽吹きはまだですがしっかり春を感じるイイ季節です
いつものようにキジ君やリスくんの来訪もあったり小鳥が北側に残った僅かな雪を突きにやって来たり
デッキでコーヒーをすすりながら楽しく観察させて貰えば屋根のない病院は本領発揮となります
すっかり夏仕様に変身した山荘で今宵はノンアルコール日本酒とやらで一杯やって明日の早朝帰宅となります


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