ハッピーバースデイ [留学生日記]
春学期も始まり二年目の大学生活に入ります。
恒例の部屋替え・パートナー替えですが、今回はまずトムの相方マーク兄貴がキャンパス外の
アパートへ彼女と引っ越して行ったので、私が再び古巣へ戻ることになりました。
私の後釜にはビッグ・ロンが引っ越して来てエリックのパートナーに。
一見内輪だけの変化にしか思えないことですが、人の動きはかなりあった様でいた。
マークのようは移動は別として、まず目に付いたのは一年生のドロップアウトでした。
日頃の生活振りを見ていると仕方のない事かも知れませんが、プロベーション入りしていた者が
意外に多かったのには少々驚きました。これも人生ですね。
また、他校へ転校していった仲間も結構います。
日本と違ってアメリカでは学校間の移動と言うものが比較的簡単に出来るため、自分の学びたい
事がしっかり固まってしかも、もっとレベルの高い学校へ行きたいと思えば実現可能です。
時には学校がある土地に興味を持って転校する者や、彼女や彼氏を追っかけて移動する者と
いう風に、その人たちの人生劇場の一場面だったりもするわけです。
ちなみに移動先は断トツで州内の気候が温暖な地域、例えばサンディエゴなんかが多かったです。
ここは霧が多くてスッキリ晴れることはあまりない、ある意味少々滅入り易い場所なのでしょう。
屋内だけでも明るくしようという訳ではないですが、リビングスペースでは以外にも様々な
催し物が行われます。ここにはキッチンスペースもあって一通りのハードウエアが揃っているので
料理大好きと言う仲間は何やらいろんな事をやってました。中でも特筆すべきは元相棒の
エリックでしょう。彼を紹介した時に趣味はベイキングとお伝えしましたが、ほんとにしょっちゅう
マフィンやらシホンケーキやらを焼いては親しい仲間に振る舞っていました。
私も一度彼からマフィンをもらったことがあります。それもオーブントレイに乗っけたまま20個も!
他の仲間にも分けていいかとお許しをもらったまではよかったのですが、みんな食べ慣れている?
せいかイマイチ人気が無かったので、翌朝から一個ずつと午後のおやつに一個ずつと頑張りました。
以後今でもどこかへ旅行した時の朝食ブッフェで、自然とマフィンに手が伸びてしまうのは
どうなんでしょうね。
カントリー・ナイトと誰かの誕生日祝いをよくここでやりました。
カントリーソングをかけてダンスをする、そう、バックトーザフューチャーⅢでやっていたアレです。
カントリースタイルに身を包み、と言ってもチェックのシャツにジーンズがあれば充分です。
欲を言えばカウボーイハットかマイケル・J・フォックスがかぶっていた様な帽子があれば完璧です。
誕生日はケーキ作りが得意な女子達がその人に因んだケーキを振る舞うと言うものです。
勿論これはお決まりのサプライズでやりますので、当日本人の所在をきちんと把握しておかないと
間が持たなくなってしまいます。そこで本人の相方と事前に打ち合わせが必要になります。
これは寮内同じフロアの全員にやるという訳ではなく、やって貰える者の人徳と言うか人気と言うか
一つのバロメーターみたいなものです。寮内人間関係の縮図とでも言うべきなのでしょうか...。
自分の誕生日を忘れるほど勉強に熱中する者はいませんから、少なからずその当日は
夕方くらいからそれなりに期待に胸が小躍りすると言うか、何か妙な気分になるものです。
遠路はるばる日本からやって来た留学生の誕生日を、蔑ろにするような薄情な仲間ではないと
信じつつも心の何処かで、「トムのやつ、俺の誕生日知ってたっけ?」と今更ながらの不安(?)が
よぎるのでした。そう言えばお互い誕生日の話などした覚えがないわ。
そんな馬鹿な事を考えている内にふと、レポート作成のための資料として使う本を図書館の
司書係に頼んでおいたのを思い出したので、急ぎ図書館の方へと向かいました。
そうとは知らずに、私が部屋に居るもんだと思い込んでいる相方のトムは、口笛交じりで部屋へ
やって来て初めて部屋がもぬけの殻だと気付くと、まずシャワールームへ駆け込んだそうです。
私の捜索がちょっとした騒ぎになってしまったらしく、心当たりはみんなが手分けして全部あたって
くれた様で、図書館捜索を担当した仲間が(これが誰だった思い出せない)私を入口の
カウンターで見つけてくれ、何やら旨いこと言いながらリビングで待つみんなの所まで
エスコートしてくれたのでありました。
とんだ待ちぼうけを食らわしてしまいましたが、大勢の仲間に祝福されながら食べた手作りケーキは
ちょっと甘めの忘れられない味となりました。
それによりもケーキのサイズが芸能人がよくサプライズで貰っている結構デカ目。作り手がちゃんと
人数の事も考慮してたんでしょう。
しかし、残念ながらそのケーキの図柄が思い出せなくて、撮ってもらったはずの写真を現在も
捜索中です。
それからケーキに灯ったろうそくの数を数えて、初めて私の方が年上だと知って驚いた人も
居たそうな。
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