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トンガンをスキーへ連れてったら [留学生日記]

これを奇跡と呼ぶのだろうか。
ちょっと大げさすぎましたが、後半は7人制の大会で、我々ハワイ大は惜しくも準優勝という結果と
なりました。上出来だと思います。
7人制未経験の私を、いいからみんなのマネをして、支持は外から出すからさあ行って来いと言う
ゲイリーのなんとご無体な仕打ちでしょうか。

大会日程も全て終了し、ボルダー滞在もあと残り少なくなった事もあり、マリーの厚意で希望者を
最寄りのスキー場(時節柄ゲレンデは既にクローズ)へ連れて行ってくれることになりました。 [スキー]
希望者を募ったところ、トンガンチームから5名、白人チームから3名、そして私の計9名が参加する
ことになり、早速、マリーの知り合いのスキーレンタルショップへと向いました。

内陸地に生まれ住んで一度も海を見た事がない人がいるのと同様、生まれてこのかた雪を見た事の
ないトンガンとフィジアンジョンはかなり興奮気味でした。
しかし、トンガン全員参加と思いきや、雪は見たいけど寒いのはいや、スキーは怖そう、と残念ながら
少数参加という
結果になってしまいました。

後半日程の寝床としていたコロラド大のとある学生寮のリビングルーム(マリーが学校と交渉してくれ
ここならオーケーが出ました)に居残り組のトンガンを置いて一路ここから1時間程離れたスキー場へ
(距離からしてたぶんエルドラマウンテン・スキー場)2組に分かれて出発です。

6月と言うのにまだ積雪はたっぷりとあって、標高が上がる度にその深さも増して行きます。
途中、もう我慢出来ないとばかりにフィジアンジョンが、停車のリクエストを出しました。
私はてっきりあっちの方かと思っていたのですが、降りるや否や雪の方へまっしぐらに走って行き
両手で雪をひとすくいすると、何とも言えない嬉しそうな表情を浮かべ、そして後からついて来た私に
こう言いました。

   これが雪なんだね。[雪][わーい(嬉しい顔)]

この貴重な初体験が出来ただけでもフィジアンジョンは今回の遠征に参加した甲斐があったと
言うものです。
雪の中へダイブして見せたり、お決まりのミニ雪合戦になったりと、彼と雪の写真を何枚映した
ことでしょうか。

もっと楽しいスキーへ急ごうとマリーの催促で、やっとフィジアンジョンは車へ戻り、既にクローズと
なっていたゲレンデ下へと移動。
この中でスキー経験者はニューヨークマイクと私だけで、この私とて高校以来ですからほぼ初級者。
メリーからキャプテンジョンを通じてギアの扱い方をもう一度教わり、準備体操そこそこにまずスキーを
担いで適当な場所へハイクアップします。

慣れないスキーブーツにトンガン達は悪戦苦闘してましたが、マイクの指示でこの辺からと少し平らに
なった場所でスキーを履きます。
いよいよ生まれて初めてのスキー体験の始まりです。
時間の関係で初心者向けの講義は割愛され、いきなりボーゲンで滑って見ろとスパルタマイクの
号令を待たずして、褐色のアフロ軍団は緩いスロープへと強制的に弾き出されて行きました。

転ぶ度にキャッキャ、キャッキャと悲鳴にも似た声を上げながら何往復かしたところ、リーダーのラオが
ボーゲンスタイルで直下り始めたのには、さすがの運動神経と皆をうならせました。
その内、うまく滑れずカンシャクを起してスキーを外してしまい、雪遊びに興じる者もいましたが
いつものケラケラ笑いが飛び出し始めて普段のトンガンに戻り、初めての雪遊びを堪能していました。
ここに記者がいたら間違いなく、ローカルニュースにはなっていたでしょう。

2週間に及ぶボルダー滞在も終了して、世話になった人たちの見送りを受けてデンバー国際空港へと
例の行きと同じスクールバスで出発です。
別れ際に何故だかはわかりませんが、女子高生のスージーから思わぬハグをされて、一瞬、顔を
赤らめたのをよく覚えています。 [ぴかぴか(新しい)]そうそう、罪悪感と共に...。 [あせあせ(飛び散る汗)]
案の定、周りに居たトンガン達にはキャッキャ、キャッキャと冷やかされる始末です。

空港ではキャプテンジョンとマリーの濃厚な別れの儀式を尻目に、我々はトットとチェックインを済ませ
ゲートへと移動し、ベンチへ腰をドスンと落とした瞬間にドッと疲れが襲って来ました。
さすがのトンガン達も積み重なった疲労には勝てず、サンフランシスコまでのフライトは嘘みたいに
静かで、さぞやCAさんたちも助かったことでしょう。

サンフランシスコでみんなと別れ、そのままホノルル行きへと乗換えての一人旅です。
迷った甲斐あってこの二週間は大変貴重な体験ができ、様々な出来事が自然とフラッシュバックして
一人思ひ出し笑いしていたような気がします。
翌々日からは夏期講習が待っていました。今は一分でも早くベッドで寝たい。
なぜか寝てるのにベッドの夢を見てしまった私でした。

6話の長きに亘りお付き合いいただき、有難うございました。

劇終


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