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悲しみの裏側で [独り言の抽斗]

  グアム島タモンプラザで先週起きた何とも痛ましい事件は、まだまだ皆さんの記憶に
焼き付いていることでしょう。昨晩のニュースではその犠牲となられた三名の内のお一人の
ご遺体が、ご家族と共に祖国日本のご実家へ戻られたと伝えられ、
また、今朝刊では写真
入りで小さくその記事が掲載されていました。

ニュース映像の中では、飛行機の貨物室からベルトコンベアに乗せられ運び出される棺が
映され、その傍らで航空会社のスタッフが一礼している姿がありました。あって欲しくなかった
この場面、大変無念ではありましたが、先月にも目の当たりにしたばかりです。

身内の死に直面している私ではありますが、こうして突然、そして不条理にも手元から肉親
が奪われてしまった方たちの心中は、到底察することは出来ません。

このように国外での痛ましい事件や事故による邦人の死はニュースとして私達に伝えられます
が、こうして亡くなられて帰国される方の中には、人知れず戻られる病死の方も大勢いらっしゃる
そうなのです


皆さんは『国際霊柩送還士』という職業をご存知でしょうか?
海外で亡くなられた邦人や日本で亡くなられた外国人のご遺体に、然るべき様々な処置を
行なった上で、無事ご家族の元へ送り届ける人たちの事です。

最近、恐らく日本では数名しかいないこの人達を取材して書かれた著書『エンジェル・フライト』
を読みました。この本の存在は度々日経新聞の広告を見て知っていましたが、実際に本屋で
購入するまでの動機に至ったきっかけは、やはり私と同年齢の親戚が同じ留学時代に、別の
留学先で交通事故により亡くなっていたという事実でしょう。

一見、彼ら国際霊柩送還士の仕事は、人の死を扱うという意味で国境をまたいだ葬儀業のよう
にも思えてしまいますが、その仕事の内容たるや、筆舌に尽くしがたいものが有ります。
『おくりびと』という映画をご覧になった方もいらっしゃるでしょうが、劇中で描かれている世界とは
まったくもってかけ離れていると言わせていただき、詳しくは本書に委ねることにします。

彼らの仕事場は普段の私たちとはかなり縁遠い、羽田空港貨物ターミナルの中にあります。
仕事場と言っても事務所は建物内にあるとしても、主な業務は必要な設備を備え特殊改造
された大型車両の中で行われています。そこで昼夜を問わず搬送されて来る遺体を通じて、
常に死と遺族の悲しみとに直面しながら、極限以上の精神力をもって、しかも孤高に黙々と
その作業を進めて行くのです。

そして、そのプロフェッショナルな仕事振りの裏側には、故人が出来る限り生前と変わらぬ姿で
家族や親族・友人など、所縁のあった人達と再会できるようにとの熱い気持ちが込められている
のです。遺族の折れかかった心のケアや、今回の様に事件性の高いケースでのマスコミ対策に
至るまでの、
完璧なミッションの遂行です。

姿形はTVのニュース映像には出て来ませんが、今回のこのグアムでの惨事の陰にはきっと
彼等国際霊柩送還士の存在があったに違いありません。


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コメント 10

viviane

痛ましい事件でした・・御家族・ご親戚・ご友人の方々の心痛、考えただけでも涙が出る思いです
3年前・・あのABCで息子とはぐれ、外のベンチに腰掛けて待っていた私達
報道を見た息子も驚いていました
by viviane (2013-02-19 21:46) 

だいず

そういう職業があるということを恥ずかしながら、知りませんでした。
最近のニュースを見る限り、生きていた頃の姿とは
かけ離れたご遺体も数多いはず…。
真摯に仕事に向き合っていらっしゃる姿勢、尊敬の念に堪えません。
by だいず (2013-02-19 22:11) 

あるいる

この職業があるとは知りませんでした。
完璧なミッションの遂行。
プロの完璧な仕事には頭が下がります。
by あるいる (2013-02-20 04:27) 

pandan

知りませんでした。
影でいろいろな方の手助けがあるのですね。
by pandan (2013-02-20 05:08) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

viviane さん

あのグアムでこんな事がと、我が耳を一瞬疑いました。
タモンを訪れない邦人観光客は恐らくいないでしょうから、みなvivianeさんと
同じ思いでしょう。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2013-02-20 20:53) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

だいず さん

あの羽田貨物ターミナルの片隅で一心不乱に変わり果てた遺体と向き合う
彼らの計り知れない精神力と義務感には敬服するしかありません。
現地で本人確認された遺族の方々は日本へ戻ってきた遺体を見て一様に
驚かれ、そして感謝の涙を流されるそうです。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2013-02-20 21:00) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

あるいる さん

いままでこの職業名すら公にされる事が無く、今回この著書の出版でようやく
認知される事となるのでしょう。
監察医の仕事の凄さをもくすぶらせてしまうほど、タフな職業です。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2013-02-20 21:08) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

pandan さん

彼らのお陰で数多くの遺族の悲しみが、少しでも和らげられていると思います。
仕事を完璧に仕上げるため、日頃から人肌や唇の色の違いまで細心の
注意をはらわれているそうです。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2013-02-20 21:17) 

tommy88

『国際霊柩送還士』とは初耳です。
プロとしての意識は高く持って仕事をしたいと常常々思っています。
しかしながら人間関係がうまく築けずに、無骨な対応をしてしまいます。
友だちが少ないという理由で孤立しています。
『国際霊柩送還士』の孤高の姿には頭が下がります。
寂しがり屋の私には絶対になれない仕事です。
by tommy88 (2013-02-21 10:32) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

tommy88 さん

最近出来た言葉と言っていいほど知られていませんので、無理もないです。
そうですかぁ、ある意味tommy先生も孤高に教鞭をとられてるんですね。
実はこのエンジェルフライトを読んだ後のインパクトがかなり強かったので、
高ぶった神経を落ち着かせるべく、あのダブルミリオンセラーの続編、そう
あの大阪弁のゾウの神さんを読んだんですよ。おもろかったですよ。
当たり前の事なんだけど、なかなか実践されない数々の教え。また勉強させて
貰ったって感じです。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2013-02-21 20:52) 

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